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カレーは彼の味。

カレーとは厄介で難儀な食べ物である。とにかくこだわりのクセがすごい。カレーと呼ぶのか、カリーと呼ぶのか、それともライスカレーなのか。ソースをかけるだの、生卵をのせるだの、らっきょはマストで、その他もろもろうんたらかんたら。人にカレーのこだわりを語らせるときりがない。そしてとにかく、誰もが母ちゃんのカレーが一番だと思い込んでいるから、しまいには「いやいやそれは邪道だ」とか人のカレーにケチつけて、うっかり戦争勃発な勢いである。

かくいう私も母のカレー信者であるから、彼氏ができるたびに我が家のカレーを作ったりする。そして、うちはね大人がジャワカレー辛口で子供がバーモントカレー甘口だったんだよ、なんて家カレーエピソードを披露し、あなたのとこのカレーはどんな味?なんて会話を繰り広げるのだ。恋人同士は寄り添うものであるから、戦争なんてことにはならずに、次はあなたんちのカレーを作ってみるわね、って甘い会話で終了をする。好きな人が好きな食べ物を好きになる私は、ココイチのチキンとほうれん草のカレーが好きになった時期もあった。(ちなみにココイチの万人を満足させるあのレパートリーには脱帽である。)あの人の好みに寄せたカレーを作るのが得意技にもなった。家のカレーをありとあらゆる方法でアップデートしようと試みたこともあった。(お肉を変えたり、圧力鍋を使ったり、野菜をミキサーにかけてみたり etc…)

そんな私もある時初めてスパイスカレーに出会い、きっとスパイスにはまった誰もが感じたであろう衝撃を受けた。この感動をみんなに伝えたい!と思って、スパイスのレシピ集なんかを買って、家族やら好きな人にやら振舞ってみたりするのだが、それがなぜかすこぶるウケが悪い。クミンなんて、かわいそうなことに脇汗のニオイだとか罵られるんだから。ジャパニーズカレーの人気は簡単には揺るがないらしい。

だけど気づけば、スパイスカレーもすっかり市民権を得てお寺で振舞われるほどの人気者になっていた。このカリー寺には老若男女さまざまな人が携わっているのだからカレーの魔力はあなどれない。きっと参加する皆さんの情熱はすごいのだろうな。藤井寺のイントネーションでカリー寺だって。ほらね、もうタイトルからしてこだわりのクセがすごい。夏のお昼にスパイスカレー、楽しみだなあ。岡山からひょっこりお邪魔します。

(文・鑓屋 翔子)